「保険代理店ITハンドブック」inswatch経営塾2000編(INSPRESS◎績文堂)
”お客様のために何ができるか”を原点に、自社の体に合った顧客データベースシステムを構築、顧客情報(属人的データ)の共有化と社員のモチベーションのアップに成果を上げているのが有限会社鶴亀(宮城県石巻市・武山敏彦社長)だ。武山社長は2代目代理店主で旧森山保険を引き継ぎ、平成16年4月1日に現在の「鶴亀」に組織変更した。
7年前の同社の状況は自動車保険の比率が約80%、しかも更改は1件1件戸別訪問。月払い保険料はほとんどが手集金で、電算機領収書の枚数が月700枚近くある典型的な家業型代理店だったという。たしかに、顧客定着率や紹介による新規契約、集金手数料率などメリットも多いが、自動車保険を主体とする経営姿勢からの転換、紙ベースから電子化による低コスト化に加えて永続的に顧客を守る為には何をすべきかが、同社のシステム化の背景にあった。
顧客データベースシステムの導入にあたっては、生損保の契約情報を一元化、これと顧客情報がリンクされ、あらゆる情報が瞬時に得られるということを第一の目的とした。顧客を徹底的に知ることによって、「顧客と鶴亀(個人の属性でない)との1対1の関係を作る」との思いだ。
こうした目的にそってCTIシステム(事前に顧客を知る)、顧客データベース(その場で知る)、グループウェア(全員で知る)の仕組みを導入したが、導入にあたっては①スタッフが喜んで使ってくれること②顧客が快く個人情報データを登録してくれること③システム開発業者の選定の3点を重点課題として取り組んだ。とくにシステム開発業者の選定について武山社長は「単なるシステムの構築ではなく、同社の経営理念や事業への想い、保険の仕組みと一つ一つの商品への理解を求めるなど、スタッフ全員参加のシステム作りとなった」という。
また、こうしたシステム作りと平行して、オフィスの改装と一人一人に新しいパソコンの配備、スタッフの役割を明確化した分業制の導入、スタッフがデータを取りやすいデータカードフォームの作成、そして顧客から快くデータ登録をもらうための「社外報・つるかめ通信」(満期時に同封し、データ登録の必要性と同社のコンセプト打ち出した情報誌)を作成し、成果をあげている。サービスの一貫性、完結性、継続性の三つを徹底することによって、顧客満足度を「鶴亀」のロイヤリティまで高めようとの狙いだ。
2003年7月26日に発生した「宮城県北部連続地震」では、被災地域である4つの町村の地震保険契約者をいち早く検索し、ライフラインが寸断される中で誰よりも早く契約者を訪問し、顧客の無事確認と事後の対応を説明するなど契約者から非常に喜ばれた経験もした。
現在、同システムに会計ソフトを導入、リアルタイムで月次試算表を作成し、月末締め切り後の翌1日には決算状況を把握するなど、この点でも情報の共有化が進んだ。また、スケジュール管理ソフト(サイボウズ)の導入で、先々の行動予定の把握とお互いの業務の流れを共有できるなど、バックオフィス機能充実が着実に進展している。
「システムは人づくり」という武山社長。
何のためのシステムか、誰のためのシステムかと自問。それはスタッフが1日やさしい気持ちで過ごせること、そして能力を余すことなく発揮できる環境を整備すること、このことが”お客様利益第一優先”の質の高い経営につながるという。そのためには「最先端の設備投資を惜しまない」というのが同社の経営のスタンスだ。本年7月、保険の鶴亀のロゴマークと鶴亀キャラクターデザインが、登録商標となり、ますます自社ブランドの確立に向けて前進中である。
(保険ジャーナリスト 石井秀樹)
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