「昔は良かった」 よく聞く言葉である。
コンプラは今のようにうるさくなかったし、保険商品は単純そのもの、リスク細分型も無かったしお客様の生年月日だって聞く必要も無かった。生保と損保の住み分けもハッキリしていたし、何よりも右肩上がりの経済成長が多少の失敗など帳消しにしてくれた。そんな先輩方の嘆きをよそに時代はどんどん進んで行く。一体全体保険業界だけがそうなのか?という事を他業界の変遷を通して検証してみたい。
例えばプロレス。私が小さい頃プロレスの全盛時代だった。
ジャイアント馬場、アントニオ猪木。私の生まれた村では、プロレス中継の日は、殆どの家庭でテレビの前に釘付けになっていた。外人の反則技に、年寄りなど大いに興奮し、「レフリー、反則だべ、どこ見てんだー!」そのまま脳溢血で倒れ救急車で運ばれたなどという珍事もあった。全国でもそんな事例は結構あったと思う。それでもプロレスの放映は中止・自粛などならなかったし、家族からの抗議も無かった。(近年のポケモン事件の比では無い)アントニオ猪木が腕拉ぎ逆十字を決める。それでも敵役のタイガージェットシンはマイッタをしない。
おもむろにパンツに隠し持った凶器で反撃に打って出る。観客は興奮のるつぼ!
あれが、選手同士、計算し尽くされた巧妙なショウなのだと知ったのは随分後になっての事だ。今のK-1やPRIDEをみればよく分る。一旦決められた関節技が如何に厳しいものかを。舞台裏が分ってしまえば観客は冷静になる。我々保険代理店も、最早K-1やPRIDEの世界に突入してしまったのかも知れない。
お客様はホンモノを見抜く目を持ってしまった。そして、反則技と知っていながら見逃してくれたレフリー(保険会社?)は、もういないのである。
2004年(平成16年)7月29日 保険毎日新聞・第5363号 代理店版に掲載